EV/HEV、電鉄、産業用ロボットなど高出力モーター電源制御用インバータでは、直流・交流電力変換時のエネルギーロスによる発熱が大きく、シリコン(Si)パワー半導体が限界を迎えています。このため、エネルギーロスが小さく250℃を超えても動作可能なシリコンカーバイド(SiC)半導体の利用拡大が期待されています。SiCパワーモジュールの大きな課題は、いかに理想的な放熱構造を実現するかということにあります。現状では、はんだやグリスを使うことにより、モジュールとして大きな熱抵抗が生じています。さらに、一般の銀焼結接合技術を適用した場合でも、低温低圧による大面積接合が難しく、高加圧で銀メタライズを必要とします。
当研究所は、10年以上前に世界初のミクロンサイズのAg焼結接合技術を開発し、長年に渡り基礎理解と技術ブラッシュアップをしてきました。この度、「大面積接合が可能であると同時に相手材のメタライズを不要とする」事を実現し、理想のSiCパワーモジュール放熱構造の実現と製造プロセスにおける大幅なコスト削減を可能としました。はんだ接合とグリスによる大きな熱抵抗を排除出来たことにより、「熱抵抗-DBA基板-Al冷却器」を全て銀焼結技術で直接接合した優れた放熱構造により、同じパワーを投入してもSiC温度の100℃低温化を実現しました。これにより、SiCパワーモジュールを現実的に小型化・薄型化し、著しい性能向上に加え優れた信頼性を獲得し、さらにナノ粒子技術を使わない低コスト化も可能となりました。新世代パワーモジュールの社会実装を一気に加速させる技術となります。
また、大阪大学フレキシブル3D実装協働研究所(F3D協働研究所)は、大学が有する広い学術分野の基礎知識を集積し、多くの企業が参加できるオープンプラットフォームを提供しています。活動としては、技術相談・製造から評価に至るまでの一連の装置利用(自主利用、依頼利用)、個別の共同研究、公開講座による新技術情報発信、コンソーシアム活動などを展開しています。パワーエレクトロニクスを幅広く捉えるWBG実装コンソーシアムに加え、2つの技術領域(樹脂接着、3D高密度実装(Weak-Micro-Via))のWGを今年度立ち上げ、ポスト5G先端技術の相互理解と参画する企業間の連携の活性化、共同研究や産学連携の加速化を目指しています。さらに、日本のものづくりの高い価値である「優れた品質」を保証するための各種計測‧評価基準を開発し、世界標準に向けた普及活動を推進します。
令和3年度は経済産業省近畿経済産業局「地域新成長産業創出促進事業費補助金(地域産業デジタル化支援事業)」の支援を受け、ポスト5G技術を展開する地域企業の活性化を目指しています。
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